まつもと泌尿器科 兵庫県神戸市東灘区 阪急「御影駅」北側徒歩2分

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前立腺疾患

前立腺は、精液の一部である前立腺液を分泌する男性特有の臓器で、生殖に関与しています。膀胱のすぐ下に接して、尿道を取り巻くように存在します。老化によって肥大してくると、内部を通過している尿道が圧迫されて、尿が出にくくなる等の症状をおこします。悪性腫瘍である前立腺癌も近年増加傾向にあり、早期発見をして適切に治療することが重要と考えられています。


前立腺肥大症

【症状】
 中年以降の男性では、徐々に前立腺が肥大してくることが多く、50才以上の男性の約50%に前立腺肥大症が認められます。
 肥大してくる原因としては、加齢や男性ホルモンなどが影響しているといわれています。前立腺が肥大すると、尿道が圧迫され、また前立腺内部の平滑筋が尿道を締め付けるために、おなかに力を入れないと尿がでない、尿の勢いが弱い、尿が途中で途切れるなどの排尿困難の症状がでます。
 また、尿が近い、尿意を我慢しづらい、夜間睡眠中に排尿のために起きる等の膀胱の過敏状態による症状や残尿感、後漏れなど排尿後の症状もでることがあります。これらの症状は前立腺肥大症に特有の症状ではありませんが、前立腺肥大症になると比較的多くみられる症状です。最近尿の出かたがちょっとという方は、前立腺肥大症の疑いもありますので早めに受診なさってください。ご自分の症状をチェックするにはリンク先にある「排尿トラブル改善.com」の前立腺肥大症チェックシート(IPSS)を利用されるとよいでしょう。

【診断の流れ】
 初診時にはまず症状について詳しくお聞きします。
また既往症や持病、服用中のくすりなども確認いたしますので、おくすり手帳などもご持参ください。
 症状から前立腺肥大症が疑われた場合には、超音波検査で前立腺の腫れ具合や膀胱の状態、場合によって腎臓の腫れがないかなどもチェックします。膀胱に尿が十分にたまっている状態であれば、機械に向かって排尿していただいて、排尿の勢いなどを測定する尿流量測定検査をします。肛門から指を挿入して前立腺を触診する直腸診を行う場合もあります。以上の診察から前立腺肥大症による排尿障害であると診断がつく典型的な場合には、初診日から投薬による治療を開始する場合もあります。しかし、頻尿などが主症状の場合で、前立腺肥大症の症状とはいいきれないときには、排尿日誌を持参していただいてから治療を開始することがあります。排尿日誌は丸1日間の排尿時刻、1回1回の排尿量などを記録していただくもので、お手数をおかけすることにはなりますが、症状の原因などを理解するのに大いに役立つものですので、ご協力をよろしくお願いいたします。

【治療のあらまし】
 前立腺肥大症による排尿障害の治療は、大部分の症例では薬物治療が中心になります。症状によっては複数のくすりを併用する場合もあります。くすりの効果と副作用などをチェックして投薬内容を調整します。投薬治療だけでなく、水分摂取や食事内容に関するアドバイスや生活指導なども同時に行って、少しでも快適な排尿状態が維持できるように協力させていただきます。もちろん手術治療がふさわしいと考えられる場合には、適切な治療を受けていただけるように、連携病院をご紹介させていただきますのでご安心ください。


前立腺癌

前立腺癌は近年増加傾向にある男性特有の癌です。
前立腺肥大症から癌に進行するわけではなく、基本的には別の病気ですが、前立腺肥大症に合併することも少なくありません。前立腺癌に特徴的な症状はなく、前立腺肥大症を合併していないかぎりは、初期の癌では症状がないのが普通です。前立腺癌は一般的には進行速度の遅い癌で、早期に発見すれば種々の治療で十分にコントロールできますから、そう過度に恐れることはありません。前立腺癌の早期発見に大変役に立つのがPSA(前立腺特異抗原)という腫瘍マーカー検査です。少量の採血をするだけで測定できますので、前立腺癌の発生が心配される50歳以上の男性は、一度はPSA検査を受けられることをお勧めします。住民検診や人間ドックでもPSA検査が設定されていることが多いので、利用されるとよいでしょう。

【PSA検査で異常を指摘された場合の診療について】
 検診などでPSAの高値を指摘された場合には、泌尿器科専門医としての豊富な経験をもとに、検査値の意味するところなどを丁寧に説明いたします。PSAが正常値4.0ng/mlを越えているからといって、それが直ちに前立腺癌を意味するわけではありません。PSAは前立腺癌と強く関連しますが、前立腺癌の場合にしか上昇しない検査ではありません。前立腺癌の細胞は多量にPSAを分泌するので、前立腺癌では値が高くなり易いのは事実です。しかし、正常な前立腺細胞も少量のPSAを分泌するので、前立腺肥大症が大きい場合や前立腺に炎症がある場合にもPSA値がある程度は上昇します。前立腺癌かどうかは、前立腺生検という検査で最終的な診断をしますが、PSA値が4.0以上である方全員が前立腺生検の検査を受けられる必要はありません。前立腺生検はある程度の苦痛を伴い、検査後の発熱など合併症の心配もありますので、十分に適応を絞って行うべき検査です。PSAが4-10程度の軽度な上昇の場合には、全員に生検をしても実際に前立腺癌が発見される確率は25-30%程度です。当院では、超音波検査による前立腺の大きさの評価や前立腺の触診などの基本診察のほか、必要な場合には前立腺造影MRIを連携病院で受けていただき、それらの結果から総合的に前立腺癌の可能性がどの程度あるかを詳しく説明いたします。前立腺生検をすぐに受けることをお勧めする場合もありますし、PSAの再検査でしばらく経過をみることで十分と考えられる場合もあります。前立腺生検を受けていただく場合にも、患者さんご本人が納得して受けていただけるように適切にアドバイスいたします。
 前立腺生検は、経直腸的超音波ガイド下前立腺生検という方法で行うのが一般的で、これは肛門から直腸内に挿入した棒状の超音波プローブで前立腺を観察しながら、直腸内から前立腺に向けて生検針を刺して前立腺組織を採取する検査です。前立腺の全体から万遍なく、通常は8から10箇所の組織片を採取し、それぞれの組織中に癌細胞があるかどうかを病理学的に検討します。直腸内からの生検は針を刺す痛みもそうは強くないため、外来検査として無麻酔で実施することも不可能ではありません。しかし、腰椎麻酔などの麻酔をして、全く痛みを感じない状態で行う方が、適切な場所から正確に組織を採取しやすく、正確な診断につながります。この場合には2-3日の短期入院が必要ですが、検査後に起こりうる感染症や出血などの合併症にも十分な体制で対応できるので、より安全といえます。このような理由から、当院では前立腺生検はあえて行っておらず、生検が必要な場合には入院検査が可能な連携病院に紹介させていただきます。

【前立腺癌と診断された場合の診療について】
 もし前立腺生検の結果で前立腺癌と診断された場合には、どのような治療法が選択できるかについて、詳しく説明やアドバイスをさせていただきます。前立腺癌の治療法には、大きく分類すると手術、放射線治療、ホルモン治療の3つの柱があります。手術、放射線治療は病気の根治をめざす治療法で、年齢が比較的若く、早期の癌の場合には、どちらかの治療を選択することになります。これに対してホルモン治療は、根治させるというよりも、癌をいわば休眠状態にしてコントロールする治療法といえます。前立腺癌の増殖に関係する男性ホルモンの産生を抑える注射薬と男性ホルモンの作用を抑制する内服薬による治療が主に行われます。早期の癌であっても高齢であったり、重大な持病をお持ちの場合や、すでに前立腺周囲に浸潤したり、遠隔転移のある進行癌の場合には、ホルモン治療が選択されます。根治をめざす治療にも多くの選択肢があるのが前立腺癌の大きな特徴です。手術には従来の開放手術以外に、内視鏡手術(腹腔鏡手術、小切開内視鏡下手術)があります。また、放射線治療にも従来の外照射以外に、IMRT(強度変調放射線治療)、粒子線治療、小線源治療など種々の治療方法があります。ただ、当然のことながら、それぞれの治療法には長所や欠点があり、治療法としての限界もあります。前立腺癌の状態(癌の広がりの状態や癌細胞の悪性度など)、年齢、持病の有無、治療に割ける時間、性機能の状態などを考慮しながら、各治療法について丁寧に説明させていただきます。前立腺癌の治療には選択肢が多いのですから、医者から押し付けられるのではなく、ご自分の病気や各治療法の利点・欠点などをよく理解したうえで、個人の価値観に基づいて、納得のいく治療を選択されるのが理想的であるといえます。当院では、納得のいく治療を選択していただけるように、十分な情報提供とアドバイスをさせていただきます。
 手術・放射線治療後の経過観察もさせていただきます。ホルモン治療にも十分な経験を有しておりますので、安心してお任せください。経過観察のためにCTなどの画像診断が必要な場合や、病院での治療が必要となった場合には、綿密な連携を取れる病院へ紹介させていただきます。


前立腺炎

前立腺に炎症をおこしている状態を前立腺炎といいますが、これには急性前立腺炎と慢性前立腺炎の2種類があり、それぞれ全く違う病気と言っても過言ではないほどに症状などは大きく異なります。

【急性前立腺炎】
 多くは尿道から、細菌が前立腺の内部に侵入し激しい炎症を起こすもので、急性細菌性前立腺炎とも称されます。尿道カテーテル挿入などの泌尿器科的処置、性行為など細菌感染の契機が明らかな場合もありますが、何の前触れもなく発症することも少なくありません。症状は排尿痛、排尿困難感、頻尿、残尿感、会陰部痛(肛門と陰嚢の間の疼痛)、残便感と38℃を超える発熱です。検尿では白血球と細菌が多数みられることが多く、肛門からの触診で前立腺の腫脹、圧痛などがあれば診断できます。起炎菌は大腸菌が圧倒的に多いですが、緑膿菌やブドウ球菌などの細菌や時には淋菌やクラミジアが原因となる場合もあります。炎症の程度が比較的軽い場合には、内服の抗菌薬のみで治療できますが、炎症が激しい場合には注射抗生剤の点滴治療を行う必要があります。時には敗血症など生命を脅かす重症の感染症になることもあるため、糖尿病の持病のある方や、炎症所見が重症な症例では入院が必要なこともあります。

【慢性前立腺炎】
 症状として典型的なものは、長時間の坐業が苦痛となるような会陰部痛ですが、下腹部、陰嚢、尿道の疼痛や不快感、ときには下肢の疼痛なども訴えられます。その他に頻尿、残尿感、排尿時不快感、排尿困難感、射精痛など多彩な症状がみられます。  慢性前立腺炎の診断は、肛門から手指を挿入して前立腺を強く触診(マッサージ)し、マッサージによって尿道から出てくる前立腺液(前立腺圧出液)を採取します。前立腺液がうまく採取できない場合にはマッサージ後の尿を検査します。前立腺圧出液あるいは前立腺マッサージ後の尿に白血球が有意に多く見られれば慢性前立腺炎と診断されます。また前立腺に圧痛がみられることも診断根拠となります。以上のような手順で診断されるのが典型的な慢性前立腺炎ですが、このような典型例だけではないのが、ある意味この疾患の厄介なところといえます。  中には会陰部痛や下腹部痛など典型的な慢性前立腺炎の症状があり、前立腺の強い圧痛もみられるのに、前立腺圧出液やマッサージ後尿に白血球が全くみられない症例もあります。このようなものも非炎症性の慢性骨盤疼痛症候群として慢性前立腺炎の一つの病型に分類されています。  また前立腺マッサージで診断される炎症の程度と自覚症状の程度がかならずしも関連しないのもこの病気の特徴です。明らかに前立腺圧出液中に多数の白血球が認められ、慢性前立腺炎を起こしていると考えられても自覚症状が全くない方もおられます。治療によって炎症所見が改善するとともに、自覚症状も改善していく症例、また炎症所見が再発すれば自覚症状も悪化するという症例はわかりやすいのですが、そのような症例ばかりではありません。したがって当院では、前立腺マッサージによる炎症状態の程度に重点を置くのではなく、患者さんの自覚症状の改善に主眼をおいて治療を進めるようにしています。  治療の方法としては、生活指導と薬物治療が中心で、症例によっては定期的な前立腺マッサージを行うこともあります。また慢性骨盤疼痛症候群ではネオコントロールによる磁気治療が有効であることも多いので、仕事に差し支えるほどの疼痛で悩んでおられる方にはお勧めしています。薬物治療では、長期間にわたって抗生剤や抗菌剤を処方される医療機関もあるようですが、当院では治療開始初期に2週間ほどは処方しますが、以後はなるべく使用しない方針です。慢性前立腺炎のうち、原因に細菌感染が関与している慢性細菌性前立腺炎は案外少なく、5-10%と考えられています。尿路感染症を繰り返す症例以外には、長期間の抗生剤・抗菌剤の連用は無意味と考えています。  症状を抑えるための処方として、セルニルトン、αブロッカー、漢方薬などを中心的に使用しています。慢性前立腺炎は一生直らない病気であるとか、炎症所見が取れるまで治療を続ければいけないとか、さまざまな誤解のもとに、過剰に悩んでおられる患者さんも多いようですが、慢性前立腺炎は決して怖い病気ではありません。症状がとれれば、炎症所見があったとしても気にする必要はありません。生活に気をつけて、気楽な気持ちで付き合うことが大切です。


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